ワンルームマンション投資は節税できて将来の年金代わりになるのか?
ここ数年、ワンルームマンション投資に関するご相談が多いです。 相談以外にも「将来の年金代わりに」といって始める知人も何人もいます。 ワンルームマンションの業者さんはマンションローンが組める安定した収入のある方を狙うので、企業に「部長さんいらっしゃいますか?」などと営業電話かかってくるのがきっかけになるパターンが多いようです。 そして、世の中には不動産投資に興味を持つ方は少なくないので、ついつい話を聞いてしまい、家族に内緒で契約してしまうというのがトラブルになりやすいです。 現在、東京オリンピックを控えて首都圏の不動産取引は活発なので、ワンルームマンション投資の勧誘を受ける機会もあるのではないでしょうか? 1棟もののアパートやマンションを持つのは資金的に大変だから不動産投資をするならワンルームマンションからとお考えならこの記事をよくお読みくださいね。

ワンルームマンション投資の収支計算

まずはワンルームマンション投資の収支をキャッシュフローベースで試算してみましょう。 次のような条件の物件があったとします。 販売価格 2100万円 表面利回り 6.17% 想定年間収入 129.6万円(10.8万円/月) 管理費 7000円/月 修繕費 5000円/月 築15年 RC造 想定融資条件 融資金額 2200万円 融資期間 30年 金利 1.8% 返済月額 7.9万円 都内の人気エリアの場合、空室率は少ないものの、頻繁に入居者が入れ替わることを想定して90%くらいで試算しておくことも必要です。
満室計算 90%入居
家賃収入 129.6万円 116.6万円
銀行返済 94.8万円 94.8万円
管理費 8.4万円 8.4万円
修繕費 6万円 6万円
固定資産税 15万円 15万円
火災保険 2.5万円 2.5万円
年間支出 126.7万円 126.7万円
年間収支 2.9万円 ▲10.1万円

この例では満室ならなんとかトントンくらい、90%だと赤字になります。 これで、何年かして家賃を下げなくてはならなくなった場合、収支はもっと悪化します。 実は最近、相談を受けた事例はもっと厳しい結果が出てまして満室経営でも年間かなりのマイナスになる結果でした(業者さんの試算もマイナスでした)。 銀行の返済が無くなればほとんどの家賃収入が残るから、それを年金代わりにという考えですよね。 でも、30年後に築45年のマンションの家賃はいくらでしょうか? 入居者は付くのでしょうか? 30年間、ほぼ赤字を我慢し続けた見返りにふさわしいものでしょうか?

ワンルームマンション投資で節税?

収支が毎月マイナスになったとしても、不動産投資は節税になるからという方もいます。 はたしてそうでしょうか? まず、経費を差し引いて税金が減るから節税になる、というのは意味がありません。 なぜなら、実際に経費分のキャッシュが出ているのなら税金が減るのは当たり前だからです。 また、キャッシュアウトのない費用である減価償却のメリットを強調される場合もあります。 けれども、先ほどの例のRC造りのマンションの耐用年数は47年。築15年なら残りの耐用年数は32年あります。 さらに減価償却が使えるのは建物のみで、土地に減価償却はありません。 事例のマンションでおそらく年間30万円程度の減価償却の計上になると思いますが、その金額では不動産所得がマイナスになることはほぼありません。 よって、ワンルームマンション投資では節税できないと考えて間違いないです。

それでもワンルームマンション投資をしたかったら

ワンルームマンション投資のメリット

  • 探せば数百万円の物件もあるため、少ない投資額で始められる
  • 需要の高い物件なら安定した家賃収入が期待できる
  • 相続対策になる

ワンルームマンション投資の収支をよくするには

ワンルームマンションの収支が悪くて頻繁にお金を出さなくてはならないと、手放したくなる方も多いようです。 節税効果も期待できないとなると、やはり収支が良くないと投資する意味がありません。 自己資金を増やして銀行融資を減らすのも一つの方法です。 ですが、考えていただきたいのは、利回りのいい物件を見つけることです。 きちんとした業者さんもいることは事実ですが、業者さんがゴリ押ししてくる物件はハズレが多いようです。 収支をシュミレーションして冷静に判断してください。 ワンルームマンションは東京都の建築規制などで今後は物件の数が増えないことや東京オリンピックの影響などで物件価格が高くなっているように感じます。 その中でいい物件を見つけたかったらアンテナを張っておくことが大切です。 このように考えるとワンルームマンション投資はマメではない人には不向きかもしれません。

不動産投資で成功するには

今は低金利で銀行にお金を預けても全く増えません。 加えて、将来の年金不安からワンルームマンション投資など不動産に関心を持つ方もいるでしょう。 不動産はインフレに強く、老後の不安解消に役立つ可能性は高いです。 ただし、参入するには多額の資金が必要です。 ですから、不動産に関心を持たれたら絶対に業者の言いなりにはならず、自分で勉強をしてください。 勉強なくして不動産投資での成功はありえないと断言します。


ファイナンシャルプランナー 松田 聡子
この記事を書いた人
松田聡子

【経歴】明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
【保有資格】日本FP協会認定CFP® DCアドバイザー 証券外務員二種


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