役員社宅は節税メリット大。経営者は家を買ってはいけない!
法人オーナーが個人で住宅を取得すると住宅ローン控除が受けられますが、もっと有利な節税方法があります。それは、社宅を利用することです。社宅を活用すれば、固定資産税や住宅ローンの金利などを法人の費用にすることができます。 今回は、役員社宅の節税メリットについて法人の財務に強いファイナンシャルプランナーがお伝えします。
松田聡子松田聡子

現役のファイナンシャルプランナーとして、中小企業経営者のマネーコンサルをしています

役員社宅の節税メリット

役員社宅は会社名義の住居を役員に貸し出すパターンと、会社が賃貸物件を借りて役員に転貸するパターンがあります。ここでは、役員社宅の節税メリットを解説します。

家賃相当額を損金にできる

役員の住む賃貸物件の契約を会社名義すると、会社が負担する家賃相当額が全額損金に算入できます。会社が社宅を役員に提供する場合、会社は役員から一定の賃料を受け取ります。賃貸物件の場合、会社が貸主に払う家賃と役員が負担する賃料の差額が損金算入額になるというわけです。

会社名義の社宅の費用を損金にできる

会社が社宅物件を購入した場合、次のような費用を損金計上できます。
  • 借入金の利息
  • 不動産取得税
  • 登記料
  • 固定資産税
  • 修繕費
さらに、建物の価値が下がった分の減価償却費を計上できます。個人で住宅を取得しても、ローン金利などを経費にすることはできません。実態としては会社と個人が一体でも、財布を使い分けることで節税できるのです。

社会保険料削減につながる

役員社宅を導入すると、社会保険料が削減できます。個人の住居費の負担が大幅に減れば、役員報酬を下げられるからです。役員報酬を下げると、会社に残るお金が増え、役員の所得税は下がります。それだけでなく、社会保険料の等級も下がり、会社にも役員個人にもお金が多く残るのです。

個人の費用も会社が負担すれば節税につながる

会社と個人で二つのサイフを持てることは、法人オーナーの最大のメリットです。個人で家を借りたり買ったりするお金は、所得税を引かれています。しかし、会社が負担すれば税引き前のお金が使えます。さらに、かかった費用を経費として計上できるので、会社の税負担も減らせるのです。 個人で使用しているクルマを会社名義にするのは、同じ理由からです。どんなものでも会社負担が認められるわけではありません。しかし、住居費を会社が持てば残るお金が大きくなることは言うまでもありません。

社宅家賃の設定方法

役員が会社に支払う賃料は、どのように設定するのでしょうか。ここでは、その方法を解説します。

社宅は床面積によって3つに区分される

役員社宅の賃料は、以下の3つに区分され、それぞれ計算方法が異なります。
  1. 小規模住宅
  2. 小規模住宅以外
  3. 豪華社宅
ここで言う小規模とは、床面積ベースで耐用年数30年以下の場合は132平米以下、耐用年数30年超の場合は99平米以下である住宅を指します。豪華社宅は床面積が240㎡を超える場合、もしくはプール付きなどの住宅が該当します。豪華社宅の賃料は全額役員負担になるため、節税には役立ちません。

小規模住宅の家賃

役員に貸し出す社宅が小規模住宅に該当する場合、以下の合計額が賃貸料相当額になります。
  1. その年度の建物の固定資産税の課税標準額×2%
  2. 1円×(その建物の総床面積㎡/3㎡)
  3. その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×22%
計算すると、おおむね相場家賃の1020になります。家賃15万円の賃貸住宅ならば、役員が負担する賃料は3万円程度でいいというわけです。

小規模住宅以外の家賃

社宅が小規模な住宅に該当しない場合、役員が負担する家賃は次のように計算します。

会社名義の社宅の場合

自社名義の社宅を役員に貸し出す場合、以下の合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
  1. その年度の建物の固定資産税の課税標準額×12
  2. その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6

賃貸住宅を社宅にする場合

会社が借り上げた住宅を役員に転貸する場合、以下のいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。
  1. 会社が支払う家賃の50
  2. 上記の会社名義の社宅の場合と同様に算出した金額

少なくとも家賃の50%は損金にできる

以上を踏まえると、いわゆる借り上げ社宅であれば少なくとも家賃の50%は損金にできることがわかりました。できるかぎり、節税メリットを享受するには、社宅は小規模住宅の範囲に納めたほうがよいでしょう。

役員社宅の節税の注意点

役員社宅は合法的に節税できるスキームです。それゆえに税務署から問題視されやすいため、税務調査で否認されるおそれもあります。ここでは、適正なやり方と認められるための注意点を解説します。

社内規定を作成する

社宅制度を利用するなら、入退去の要件・手続き、光熱費などの費用負担について明確にした社宅規定を作成する必要があります。社宅の節税が税務調査で問題視された場合に、裏付けとなる社内規定がないと不利になります。税理士と相談して、自社に合った内容の社内規定を作成しましょう。

顧問税理士が相談に乗ってくれなかったら

顧問税理士や会計事務所のスタッフの中には、節税相談をしてもアドバイスをしてくれない人もいます。税理士から何の節税提案もないことに不満を持つ経営者は少なくありません。社内規程作成の相談などへの対応があまりよくない場合、税理士の変更も選択肢の1つです。 税理士の変更は会社にとって気軽にできることではありません。しかし、税理士の対応が悪いことを我慢し続けるのは、会社にとってもマイナスです。この機会に御社にとってどんな税理士が必要かを見つめ直し、他の税理士にコンタクトを取ってはいかがでしょうか。 税理士の変更をするときには、しがらみのない税理士紹介サービスの利用がおすすめです。主な税理士紹介サービスには、下記のようなサイトがあります。
税理士紹介エージェント:専任コンサルタントが悩みや問題等を入念にヒアリングした上で状況に合った税理士を紹介してくれる ♠ 税理士ドットコム:71.4%のユーザーが顧問報酬の引き下げに成功! ♠ 税理士紹介ネットワーク:成約祝い金がもらえるユニークな税理士紹介サービス

家賃以外は役員負担

社宅家賃以外の水道・電気・ガスなどの光熱費、駐車場代などは役員の負担です。会社が負担すると、役員報酬として課税されるので、注意してください。ただし、賃貸住宅の共益費は、会社が負担しても問題ありません。

社長の自宅を会社に売ることは可能?

社宅が節税になることがわかりました。現在、賃貸住宅に住んでいる人なら、賃貸の名義を個人から会社に変えることは簡単です。しかし、すでに自宅を購入してしまった場合、家を個人から会社へ名義変更できるのでしょうか?

自宅を会社に売ることはできる

結論から言うと、社長の自宅を会社に売ることはできます。自宅が会社名義になれば、先述したように社長は家賃を負担し、会社は住宅にかかる費用を経費化できるようになります。手続きの流れは以下のようになります。
  1. 自宅の売買契約
  2. 会社から社長へ売買代金の決済
  3. 自宅の所有権移転登記
  4. 社宅の賃貸借契約
  5. 社長が適正な家賃を払う
以上の手続きをスムーズにできるなら、問題ありません。しかし、上記2の売買代金の決済がネックになるケースは多いと考えられます。

住宅ローンが残っている場合

自宅物件の住宅ローンがなく、抵当権が付いていなければ、会社に適正価格で買い取ってもらうことに問題はありません。問題は、住宅ローンの残債がある場合です。住宅ローンの名義を個人から法人に書き換えるのは、かなり難易度が高いといえます。 金融機関が承諾したとしても、金利が高くなり、返済期間も短くなるはずです。自宅を会社に売るなら、住宅ローンを完済し、完全に自分のものにした状態が望ましいといえます。

社長への貸付金との相殺は可能

社長が会社からお金を借りている場合、家の売却代金で借りたお金を返済できます。社長への貸付金が解消できるのは、財務上のメリットです。

自宅の売買代金が適正価格であること

自宅の売買代金は実勢価格を参考に、適正価格であることが重要です。高すぎても安すぎても、会社か社長への利益供与となり、税務署から問題視されます。また、公正な取引とみなされるには、売買代金の授受は一括で行われるほうがよいでしょう。売却益が出た場合、社長に所得税がかかります。

社長の家を会社に貸すのはNG

参考までに、社長名義の自宅を会社に賃貸し、社宅として提供するのは、借り上げ社宅として認められません。住宅を取得している社長が社宅で節税をするのは、少しハードルが高いというわけです。

まとめ

以上、役員社宅の節税について解説しました。役員社宅のように個人の費用を会社に負担させる方法には、大きな経済的メリットがあります。個人事業主では、この方法は使えません。合法的な節税ですが、自己判断で行うと税務調査で否認される可能性もあります。 そのため、社内規定の整備などが必要となるので、顧問税理士へ相談してみるとよいでしょう。顧問税理士が節税提案などに積極的でない場合、節税に強い税理士への変更も選択肢の1つです。希望に合った税理士を選ぶなら、しがらみのない下記のような税理士紹介サイトの利用がおすすめです。
税理士紹介エージェント:専任コンサルタントが悩みや問題等を入念にヒアリングした上で状況に合った税理士を紹介してくれる ♠ 税理士ドットコム:71.4%のユーザーが顧問報酬の引き下げに成功! ♠ 税理士紹介ネットワーク:成約祝い金がもらえるユニークな税理士紹介サービス

以下の記事で出張の多い社長の節税方法を紹介しています。
この記事を書いた人
松田聡子

【経歴】明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
【保有資格】日本FP協会認定CFP® DCアドバイザー 証券外務員二種


群馬FP事務所では、中小企業経営者・自営業・フリーランスのライフプラン、資産運用、相続事業承継、保険見直し、確定拠出年金導入などの相談をお受けしております。
ZOOMにて日本全国対応可能です。対面コンサルティングも承っております。詳細はお問い合わせください。
執筆のご依頼も随時受け付けております。
TEL:027-368-0020 Email:info@gunmaf.net