オーナー経営者の年金の損得を考えてみる
古い話で恐縮ですが、会社員時代の平成15年に社会保険の総報酬制が導入されました。 それまでは月々のお給料にしか社会保険料がかからなかったのに、ボーナスにも社会保険料がかかるようになったのです。 その結果、私のボーナスの手取りもそれまでより大きく減少しました。 さしたる金額でもないボーナスですが、会社員にとってはモチベーションの源の一つです。 本当にがっかりしました。 怒りさえ感じました。 当時は社会保険に関する知識なんてまるでなく、自分勝手に「社会保険を脱退して自分で賄うことはできないか」などと考えたものです。 ただ、会社員であれば社会保険料は労使折半です。 本来の費用の半額で給付を受けることができます。 ところが、オーナー経営者はそうはいきませんよね。 オーナー経営者は社会保険料を全額負担しているのと同じですから。 今回はオーナー経営者の年金についての損得について考えてみます。

将来受け取れる年金のコストパフォーマンスについて

まず、現役時代に支払った保険料と老後に受け取る年金のコストパフォーマンスについて見てみましょう。 平成28年9月分から平成29年8月分までの厚生年金の保険料率は18.182%です。 (保険料率は平成29年9月まで保険料率は上がります。) 40年間厚生年金に加入していて標準報酬月額が50万円だったとします。 支払う保険料の合計は 50万円 ×  12ヶ月 × 18.182% × 40年 = 43,636,800円   これ対して受取金額は 平成28年度の老齢基礎年金は年額780,100円   老齢厚生年金の年額は 600万円 × 5.769/1,000 × 40年 × 1.031 × 0.985 = 年額1,406,069円   基礎年金と厚生年金の合計は 780,100円 + 1,406,069円 = 2,186,169円   さて、支払った保険料は何年で元が取れるでしょうか? 43,636,800円 ÷ 2,186,169円 ≒ 19.96年 約20年ということになります。 65歳から年金を受け取り始めて85歳まで生きていれば元が取れるということです。 その後は長く生きれば生きるほどお得なわけですが、85歳になる前に亡くなれば払い損になってしまいます。 100歳まで生きても受け取れることを考えれば公的年金はなくてはならないありがたい制度です。 必要だとも思います。 でも「元が取れるのが85歳」ということを考えたら、必要以上には保険料を払いたくないです。 他に有利な資産形成の方法がたくさんありますし。

在職老齢年金について

経営者の公的年金のコストパフォーマンスの面では悪いという結論になります。 しかし、保険料を多く払えば年金の額を増やすことができますし、なんといっても一生涯年金が受け取れるのですからこれだけでは損だとは言えないと思います。 ところが、年金受給年齢でも現役を続けることの多い経営者の場合「在職老齢年金」の問題にぶつかります。 在職老齢年金制度とは、60歳以降働きながら年金を受け取る場合、給料と年金月額の合計額が一定額を超えると、年金が全部又は一部がカットされる制度です。 具体的には、給料と年金12分の1の合計額が ・60歳~64歳 28万円 ・65歳以上 47万円(平成28年度) を超えると年金がカットされます。 年金カットは現役でいる限り続き、保険料も70歳までは払わなくてはなりません。 まさに踏んだり蹴ったり。 これでは元を取るどころの話ではなくなってしまいます。

オーナー経営者は社会保障では不利

こちらの記事では経営者の健康保険のデメリットについて書きましたが、公的年金も同じようなものだということです。 しつこいようですが、可能であれば社会保険料削減を考えたほうがよいのではないでしょうか。

ファイナンシャルプランナー 松田 聡子
この記事を書いた人
松田聡子

【経歴】明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
【保有資格】日本FP協会認定CFP® DCアドバイザー 証券外務員二種


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