うつ病社員のあぶり出し?ストレスチェックで誤解されがちなポイントと課題
ストレスチェックは2015年12月から労働者が50人以上いる事業所に義務化された制度です。 対象となる事業所は2016年11月30日までに第1回のストレスチェックを行う義務があったため、現在は一巡したはずです。 そんな中で、電通の女性新入社員が自殺するという痛ましい事件が起こってしまいました。 ストレスチェックはこのような事件を予防する目的であったのではないかと思いますが、それ以上に企業の現場とストレスの関係は根深いのでしょう。 ストレスチェックの義務化に対して私がお世話になっている会社の経営者の方からは一様に戸惑いが感じられました。 対象企業でありながら義務化されたことを知らない、ストレスチェックの内容がわからない、など。 また、社会保険労務士さんもあまり理解していらっしゃる方がいませんでした。 制度自体が見切り発車だったのだろうと想像できますが、今後は対象となる事業所も増えると予想されます。 せっかく実施するのであれば、事業の役に立つようにしたいですよね。

ストレスチェックの目的は?

ストレスチェック制度は「うつ病社員のあぶり出しに使え」と主張した「すご腕社労士」のブログが炎上したことが話題になりました。 ストレスチェックの実施にあたって社会保険労務士に相談する事業所も多いはずです。 なのに、専門家でもこんな不見識の人がいるなんて衝撃的です。 ストレスチェックは健康診断とは違います。 言い換えると、ストレスチェックはうつ病等の精神障害の早期発見と早期治療を主たる目的とした取り組みではありませんストレスチェックは検査結果を分析して事業所のストレスについて評価し、環境改善につなげることが目的です。 ストレスチェックをきっかけに自らのストレスを自覚し、受診するというのは副次的な効果です。 ですから、毎年一定の時期に実施することで結果を定点観測し、事業所のストレス状況を掴むことが正しい目的です。 けれども、事業所もそこで働く人たちもストレスチェックの目的を明確に理解していないことがほとんどです。 先ほどの「うつ病社員のあぶり出し」ではありませんが、メンタルの弱い社員を見つけるためとか、まるでブラック企業のための制度のように誤解されているケースまで見受けられます。 せっかく時間もコストもかけて実施するのですから、事業所にとってプラスになるような運用にしていったほうがいいと思うのですが。

ストレスチェックの課題

さて、実際のストレスチェックではどんな内容が問われているのでしょうか? 私が見たことがあるものは次のような感じです。
  1. あなたの仕事は多いですか? 多い・ふつう・少ない
  2. 上司、先輩に相談はできますか? かなりできる・まあまあできる・できない
  3. あなたの状態についてお答えください。 活気がわいてくる・ふつう・元気がない

え、こんなのでいいの!?と思いませんか? 「簡単な質問に答えて」とあるそうですが、簡単すぎでしょう。 もっと労働時間とか人間関係に絡めた詳しい内容にしなくていいのかなと思います。 質問の内容は一定の基準を満たしていればいいということなので、こんなのになったのでしょうか。 ストレスチェックのサービスを提供する側もまだ手探りで、とりあえず基準をクリアできればOKというような感じがします。 問題だと感じたのがもう1点あります。 それは、個別の結果は事業主には知らせないことになっていますが、従業員が受診を希望した場合は「結果を知らせることに同意した」とみなすことになっていることです。 ストレスチェックの結果で従業員が不利益を被るような利用の仕方は禁じられています。 しかし、安心して本当のことを答えられなければ意味のある運用はできないのではないでしょうか。 従業員が安心して回答できる仕組みづくりが必要だと思います。 今はまだ義務だから仕方なくという姿勢で臨む事業所ばかりだと思いますが、ゆくゆくはストレスチェックによって事業所の環境を改善し、生産性を上げることができるようになるといいですね。

ファイナンシャルプランナー 松田 聡子
この記事を書いた人
松田聡子

【経歴】明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
【保有資格】日本FP協会認定CFP® DCアドバイザー 証券外務員二種


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