『ライフ・シフト』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、池村千秋訳。東洋経済新報社)という本がベストセラーになっています。
平均寿命100歳時代の到来に備え、生き方を根本的に見直そうという本です。
私はファイナンシャルプランナーとして少子高齢化社会を生き抜く人生設計を支援することを活動の柱としています。
少子高齢化の問題とともに公的年金への不安など高度成長期に作られた社会制度の限界が顕在化してきています。
これらを解決する決定的な政策は期待できませんので、どうしても自助努力が必要になります。
今回は、特に経営者のための人生100年のライフプランについて考えてみます。
戦後、急激に伸びた日本人の寿命
第二次世界大戦が終戦を迎えた1945年ごろの日本人の平均寿命は男女ともおよそ50歳くらいでした。
その後、平均寿命は右肩上がりに延びていき、1960年ごろに男性65歳、女性70歳くらいになりました。
この頃、60歳定年だとして男性の定年後の余生が5年くらいです。
現役時代に必死になって老後資金を準備しなくても5年でお迎えが来るなら何とかなりそうですよね。
そして、2015年には男性がついに80歳を超え、女性は87歳です。
やはりこのペースで寿命が延びると、人生100年というのも現実味を帯びてきます。
加えて、バブルがはじけた1991年頃から日本の人口は減り始めました。
年金受給者を現役世代が支えるための人口ピラミッドが崩れ始めたのです。
現在も年金支給開始年齢の引き下げ、年金保険料アップ、年金支給額の減額など様々な方法で公的年金制度の維持が模索されています。
けれども、急速に進む少子高齢化に対し、その場しのぎの対策で年金問題が解決できないのは誰の目にも明らかでしょう。
100歳までのキャッシュフローを真剣に考える
FP相談でキャッシュフロー表を作成する際、私がFPになりたての頃は80歳までの表でしたが、今は90歳までにしています。
けれども私たちの子どもの世代ですと、やはり100歳まで考えることは必要になると思います。
平均寿命が100歳で定年が65歳だとします。
定年後の余生を35年も生きることになります。
今の年金受給者でも年金だけで生活できないのですから、相当な自助努力をしないと老後破産ということになってしまいます。
高齢夫婦無職世帯の1ヶ月の平均収支は収入217,412円、対する支出が276,399円。
毎月58,987円の赤字ということになります。総務省「家計調査報告」(平成25年)
この赤字を貯蓄などで賄うとすると、65歳から90歳までの25年で
58,987円 × 12ケ月 × 25年 = 17,696,100円
100歳までだとすると
58,987円 × 12ケ月 × 35年 = 24,774,540円
最低でも準備しなくてはなりません。
これは生活するためだけのお金ですから、もしものためのお金もあと300万円くらいはほしいところです。
それに、趣味や旅行などゆとりの資金も用意したければ、その分もプラスになります。
絶対に考えなくてはならないことは、年金の受取額が減るので収入はこのモデル金額より少なくなることです。
では、いったいいくら準備したらいいの!?ということになりますよね。
このままだと、現役時代は老後の準備だけで終わってしまうことになるかもしれません。
現役時代の過剰な老後資金準備から解放されるには?
当然、今現在の生活を犠牲にするわけにはいきませんので、貯蓄以外の対策も必要になってきます。
では、どのような対策が考えられるでしょうか?
- 現役期間を延ばす(老後期間の短縮)
- 節約を習慣づける
- 共働きなどで収入を増やす
- 資産運用で資産を殖やす
まず、なんといっても現役期間を延ばして高齢まで働くことが対策の大本命です。
年金の受取開始が65歳になると、60歳から65歳までの無年金期間の対策が必要になります。
しかし、これからは65歳まで働くことは暗黙の了解ということで良いと思います。
高齢でも働くとなると一般的には定年延長とか働く場所の確保などが必要になります。
ですが、経営者はこの点において既に大きなアドバンテージがあります。
何歳まで働くかは自分次第ということです。
生涯現役でもいいわけです。
考えるべきは事業を後継者に譲った後どのような形で経営に関わるか、というようなことになります。
また、長く働く分、ペース配分のようなものも考えていく必要があるでしょう。
次に節約ですが、これは現役のときと老後に分けて考えます。
現役時代の節約は生活費だけでなく、住宅や教育費のコストをかけすぎないことがポイントになります。
老後に関しては、生活レベルを現役時代より落とすということを意味します。
経営者の収入増は家族で経営に関わり所得分散を図ることや、不動産投資などでしょうか。
本業だけにとらわれず、副業的なことをしてもいいでしょう。
運用については過度な期待をせず、本業の稼ぎを補うくらいでいいと思います。
ただ、人生100年への備えというのは相当に高いハードルです。
三本の矢ではありませんが、ひとつだけの対策ではなくできることはなんでもやったほうがいいことはいうまでもありません。
人生設計に欠かせないこと
そして、この対策を行う上で欠かせないことのひとつが健康です。
経営者の中には「健康オタク」のような人が多いですよね。
富の源泉が何であるかを考えれば、健康に投資することが最優先事項であることは自明の理ですね。
自分への投資です。
同じく、スキルを磨くことも人生の折々に取り組んでいく必要があります。
あとは、子どもへの教育です。
次世代になれば、本格的に100歳までの人生設計が必要になります。
早いうちから、そのことを伝えて先を見据えて行動することを教えるべきでしょう。
ファイナンシャルプランナー
松田 聡子
【経歴】明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
【保有資格】日本FP協会認定CFP® DCアドバイザー 証券外務員二種
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