既にご存知だと思いますが、この10月から社会保険の適用拡大があります。
それで何がどう変わるのか?
【制度改正前】 現在は「週30時間以上」働く労働者が社会保険の加入の対象です。
【制度改正後】 2016年10月から「週20時間以上」働く労働者が社会保険の加入の対象になります。
この制度変更を受けて、厚生労働省では以下のようなチラシを作って「受け取れる年金が増えます!」とメリットを強調しているのですが…
年金受取額について
まず「年金受取額」についてです。
例えば、モデルケースで40年加入の場合です。
このチラシに書かれている96,000円という保険料は本人負担のみです。
実際には労使合計で年額192,000円の保険料が払われています。
年額192,000円の保険料を40年払い続けたら総払込保険料は7,680,000円です。
一方、モデルケースの年金受取額は231,500円です。
65歳から年金受給できるとして、「総払込保険料の元は何歳で取れるのか?」
驚くなかれ。
なんと、33年後の【98歳】なのです。
百歩譲って、本人負担分だけ計算しても総払込保険料の元が取れるのは【82歳】です。
● 労使合計:
総払込保険料7,680,000円 ÷ 年金受取額231,500円 = 33.174年
● 本人負担のみ:
総払込保険料3,840,000円 ÷ 年金受取額231,500円 = 16.587年
保険料負担について
次にトータルの「社会保険料」です。
モデルケースの保険料は厚生年金保険料だけの金額です。
しかし、ご存知のとおり、社会保険料には健康保険料・介護保険料も含まれます。
「協会けんぽ」の場合、月収88,000円の健康保険料・介護保険料は月額5,082円/年額60,984円になります。
よって、実際は月収88,000円のケースで社会保険に加入すると、【月額13,000円/年額156,000円】の保険料負担になるわけです。
もちろん、これも本人負担分だけです。
同額を企業も負担することになります。
月収88,000円ということは年収105.6万円です。
ここから本人負担分で【年額156,000円】、労使合計で【年額312,000円】の社会保険料が徴収されることになります。
労使双方にとって重すぎる負担だといえるのではないでしょうか。
労働時間を減らしたほうが手取りが増える逆転現象も
最後に社会保険加入による手取り収入の変化について考えてみます。
今回の制度改正では週20時間以上働くと【社会保険料の対象】になります。
週20時間ということは月間では80時間(20時間×4週)の労働時間です。
モデルケースの月収88,000円で当てはめてみましょう。
月収88,000円を40時間で割ると、時給では1,100円になります。
この前提条件をもとに、労働時間を減らしたケースと比べてみます。
すると、実は労働時間を減らした方が社会保険料のかからない分、本人の手残りは増えるという逆転現象”が起きてしまうのです。
【週20時間以上勤務〈月間80時間以上勤務〉】
○ 月収88,000円(時給1,100円×80時間)/年収105.6万円
○ 社会保険料月額13,000円/年額156,000円
※労使合計の社会保険料月額26,000円/年額312,000円
● 社会保険料控除後の本人の手残り月額
75,000円/年額90万円
【週19時間勤務〈月間76時間〉】
○ 月収83,600円(時給1,100円×76時間)/年収103.2万円
○ 社会保険料月額0円/年額0円
※労使合計の社会保険料月額0円/年額0円
● 本人の手残り月額83,000円/年額103.2万円
社会保険に加入するしないのボーダーで手取り収入に年間10万円以上の差が出てしまいました。
当然、企業の負担も大きく変わってしまいます。
求められるより抜本的な改革
この件についてインターネットで主婦を対象にしたアンケートが行われています。
それによると新たに社会保険適用の対象になる収入の主婦の85%以上が社会保険に加入したくないと答えています。
企業も当然、一人当たりの労働時間を短くして雇う人数を増やすという動きになっていきます。
社会保険制度は継続していかなくてはならないと思います。
けれども、対策はもっと他にあるはずです。
あなたはどう思われますか?
※今回の制度改定は従業員501人以上の企業が対象になりますが、平成31年10月以降に制度の見直しが予定されていますので、中小企業にも拡大していくと思われます。
ファイナンシャルプランナー
松田 聡子
【経歴】明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
【保有資格】日本FP協会認定CFP® DCアドバイザー 証券外務員二種
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