法人オーナーが役員報酬を減らすと税金は減ります。
しかし、手取りも減ります。
少しでも可処分所得を多くするためには、所得控除をできるだけ活用したいものです。
所得控除の活用は法人オーナーだけでなく個人事業主にとっても必須です。
所得控除には、社会保険料控除、医療費控除など14種類あります。
中小法人オーナー、個人事業主が活用できる所得控除の中に「小規模企業共済等掛金控除」があります。
「小規模企業共済等掛金控除」は「小規模企業共済」と「個人型確定拠出年金」の掛金に対する控除です。
ここでは「小規模企業共済」を活用した節税について解説します。
小規模企業共済について
小規模企業共済は、「経営者にも退職金を!」というコンセプトで、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が提供している共済制度です。
対象は小規模な法人の役員や個人事業主で、退職したり事業を廃止した場合などに解約し、それまでの積み立ての掛金に応じた共済金を受け取ることができます。
法人の役員でも条件を満たしていれば加入できますが、個人での加入になります。
「小規模企業共済」は従業員が20人(卸売業・小売業・サービス業では5人〈宿泊業、娯楽業を除く〉)以下の個人事業主やその経営に携わる共同経営者、会社等の役員などが加入できます。
掛金は毎月1,000円から7万円まで自由に設定できます。
また、途中で掛金を増減させることも可能です。
現在、掛金は予定利率1.0%で運用されています。
これだけ見ると、退職金準備としてあまり魅力がないと思われるかもしれません。
しかし、「小規模企業共済」のメリットは他にあります。
それが節税効果です。
掛金全額を所得から控除できるのです。
その結果、以下のような節税効果を発揮します。
小規模企業共済の節税効果
| 課税される 所得金額 |
課税前の税額 | 掛金月額ごとの加入後の節税額(年間) | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 所得税 | 住民税 | 掛金月額 1万円 |
掛金月額 3万円 |
掛金月額 5万円 |
掛金月額 7万円 |
|
| 200万円 | 104,600円 | 205,000円 | 20,700円 | 56,900円 | 93,200円 | 129,400円 |
| 400万円 | 380,300円 | 405,000円 | 36,500円 | 109,500円 | 182,500円 | 241,300円 |
| 600万円 | 788,700円 | 605,000円 | 36,500円 | 109,500円 | 182,500円 | 255,600円 |
| 800万円 | 1,229,200円 | 805,000円 | 40,100円 | 120,500円 | 200,900円 | 281,200円 |
| 1000万円 | 1,801,000円 | 1,005,000円 | 52,400円 | 157,300円 | 262,200円 | 367,000円 |
※(独立行政法人中小企業基盤整備機構のHPより引用)
例えば、課税所得金額600万円の社長が掛金5万円で加入したなら、節税額は年間182,500円になります。
その場合の掛金の実質負担額は417,500円です。
つまり、417,500円の掛金で60万円を積立てたことになるわけです。
ご自身の運用で元金41万円を60万円に増やすことは簡単でしょうか?
そう考えると、すごい節税効果だとお分かりになると思います。
小規模企業共済はいくら戻ってくる?
共済金の受け取り方法は「一括受取り」「分割受取り」「一括受取りと分割受取りの併用」の3種類があります。
受取額は“脱退事由”によって変わって来ます。
受取額は多い順に【共済金A】>【共済金B】>【準共済金】>【解約手当金】となります。
それぞれの共済金の説明は以下のとおりです。
法人の役員の場合
| 共済金の種類 | 請求事由 |
|---|---|
| 共済金A | ・法人が解散した場合 |
| 共済金B | ・病気や怪我により役員を退任した場合 ・共済契約者の方が亡くなられた場合 ・老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛金を払い込んだ方) |
| 準共済金 | ・法人の解散、病気や怪我以外の理由で役員を退任した場合 | 解約手当金 | ・任意解約 ・機構解約(掛金を12ヶ月以上滞納した場合) |
※(独立行政法人中小企業基盤整備機構のHPより引用)
「小規模企業共済」は掛金を12ヶ月以上払い込めばいつでも解約可能です。
「共済金A」「共済金B」「準共済金」は5年で払込掛金総額を上回りますが、「解約手当金」は20年以上でないと元本割れになります。
解約による元本割れは注意が必要ですが、確定拠出年金と違い、中途解約ができることは経営者にとって大きなメリットだと思います。
また、「契約者貸付制度」があるため、積み立て金の範囲内で資金調達ができることも魅力です。
しかも、社長が退職するケースでは「共済金A」「共済金B」「準共済金」のいずれかに該当することになります。
これらの場合は5年で元が取れるますので、元本割れのリスクは少なくなるわけです。
受取時の課税について
「小規模企業共済」を受け取る場合は、いずれの場合も以下の通り課税されます。
| 共済金と解約手当金 | 課税内容 |
|---|---|
| 共済金AB・準共済金の一括受取り | 退職所得扱い |
| 共済金ABの分割受け取り | 公的年金等の雑所得扱い |
| 共済金ABの一括・分割 併用受取り | (一括分)退職所得扱い (分割分)公的年金等の雑所得扱い |
| 共済契約者の死亡(死亡退職金) | (相続税法上)みなし相続財産 |
| 65歳未満の任意解約(解約手当金) | 一時所得扱い |
| 65歳以上の任意解約(解約手当金) | 退職所得扱い |
共済金を一括受取する場合は退職所得の扱いになりますので、場合によっては所得税なしで受け取ることもできるでしょう。
創業したらすぐ加入しましょう!
まとめになりますが、「小規模企業共済」は掛金拠出時に全額所得控除になるだけでなく、受取時も退職所得控除が使えて大変お得な制度です。
いざというときは契約者貸付や解約で資金を調達できることも事業を経営する人にとっては魅力です。
できれば創業したらすぐに加入したほうがよいでしょう。
加入時の要件が満たせるうちに少額でも加入しておけば、後で従業員が増えて要件を満たさなくなっても脱退させらることはありません。[br num=”2″]
ファイナンシャルプランナー
松田 聡子
【経歴】明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
【保有資格】日本FP協会認定CFP® DCアドバイザー 証券外務員二種
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