個人事業主
今年の10月から、いよいよ消費税の税率が10%にアップし、食料品と新聞については軽減税率が適用されることになります。 軽減税率はケータリングは10%でデリバリーなら8%などわかりにくい点がワイドショーなどで話題になっていますね。 ところが、このややこしい軽減税率への対応策として導入されるのが「インボイス方式」というものです。 そしてこの「インボイス方式」導入のインパクトは軽減税率など軽く吹き飛んでしまうような特大のものなのです。 インボイス方式の影響が大なのは消費税の免税事業者(主に個人事業主やフリーランス)です。 今回はインボイス方式について免税事業者への影響についてお伝えします。

消費税の仕組み

インボイス方式のお話の前に消費税の仕組みについてご説明します。 私たち一般消費者が物を買うとき、代金に消費税を上乗せしてお店に支払います。 お店はお客様からお預かりした消費税を国に納めます。 税金を負担しているのは私たちですが、実際に納めるのはお店なので間接税というわけです。 さて、お店は預かった消費税を納めるのですが、預かった消費税を全額納めるのではありません。 預かった消費税から仕入れに掛かった消費税を差し引いた残りを納税しているのです。 例えば、税込みで1080円の物が売れたとします。 この商品を税込み540円で仕入れたとします。 すると納める消費税は 売上げ分80円 - 仕入れ分40円 = 納税額40円 となります。 売上げと仕入れの1年分で算出されたものを納税するわけです。

消費税の納税を免除される免税事業者とは?

ところが、事業者の中には消費税の納税をしなくてもよい「免税事業者」という事業者がいます。

免税事業者とは?

次のいずれかの条件に該当するとき、免税事業者となります。 ・事業開始後2年以内 ・前々年の課税売上高が1,000万円以内 例えば、 1年目 売上げ1100万円 2年目 売上げ800万円 3年目 売上げ1200万円 と推移した場合、 1年目 免税事業者 2年目 免税事業者 3年目 課税事業者 4年目 免税事業者 5年目 課税事業者 となります(例外はありますが、原則はこのようになっています)。

免税事業者でも消費税は請求できる!

消費税の納税を免除されている免税事業者ですが、消費税を請求しても問題ありません。 例えば、年間売上げ1000万円以下の八百屋さんがりんご1個の価格を108円(税込み)と表示して売っていても、消費税を納める義務はないのです。 本来ならお客様から預かった消費税と商品を仕入れる際に支払った消費税の差額を納めるはずですね。 しかし、免税業者は差額の消費税を納めずに、自らの利益にすることができるのです。 この点が免税事業者の手元に残る益税として問題になっていました。 税率が上がると益税となる分も上がることになり、ついにこの部分にメスが入ることになったのが「インボイス方式」の導入の背景です。

インボイス方式とは?

消費税の納税額の計算で、仕入れに掛かった消費税額を差し引くことを仕入税額控除といいます。

帳簿保存方式とインボイス方式

現在、消費税額の計算には「帳簿保存方式」が採用されており、仕入れ先が発行した請求書等の保存を仕入税額控除の要件としています。 今までは消費税率は一律だったため、課税仕入れ金額がわかれば消費税額は算出できますよね。 よって、請求書には税率や税額を記載しなくてもいいことになっていました。 ところが、消費増税に伴い軽減税率が採用されるため、商品ごとに適用税率・税額が分かる書類が必要になりました。 そこで導入されるのが2023年10月からインボイス方式です。 インボイス方式では仕入税額控除について、登録された「適格請求書発行事業者」が発行した「適格請求書」(インボイス)に記載された消費税額に基づき計算がされます。

インボイス方式だとどうなる?

適用税率・税額を記載するだけなら大きな問題はありません。 では、何が問題か? 免税事業者は適格請求書発行事業者になれません。 つまり、免税事業者はインボイスを発行できません。 免税事業者からの仕入れについては仕入税額控除ができないことになるのです。 現在の帳簿保存方式では仕入れ先が免税事業者だとしても仕入れ額控除が可能だったのに、です。 仕入れ額控除ができなければ消費税の納税額は増えてしまいます。 免税事業者からの仕入れは消費税の納税額が増えてしまうから損だ!ということになるのです。

免税事業者が取引から除外される可能性も

課税事業者が仕入れをする場合、同じ金額を請求されるなら課税事業者と免税事業者のどちらを選ぶでしょうか? 発注側からすると同じ金額を支払うなら課税事業者からならば消費税額が控除できるのだから免税事業者は排除される可能性大ですよね。 そうなると免税事業者の仕事がなくなる不安から、免税事業者が課税事業者になることを自ら選択するケースも出てくると思われます。 国としては消費税増税の効果だけでなく、消費税を納税する事業者が増える効果が期待できることになります。 おそらく軽減税率は建前で益税を潰したかったのでしょうね。 適格請求書発行事業者登録が2021年10月から申請開始ですので、現在免税事業者だったり、これから起業する方はそれまでに対応を考えておいたほうがいいですね。


ファイナンシャルプランナー 松田 聡子
この記事を書いた人
松田聡子

【経歴】明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
【保有資格】日本FP協会認定CFP® DCアドバイザー 証券外務員二種


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