国民年金基金で本当に「老後にゆとり」は生まれるのか?
3年前くらいからでしょうか。 国民年金基金のCMをよく見かけるようになりましたね。 国民年金基金は会社員や公務員に比べて公的年金が少ない自営業者やフリーランスの人を対象にした年金の上乗せ制度です。 CMでは「税金がおトクで今にゆとり」「年金が増えて老後にゆとり」と謳われています。 メリットばかり強調されていますが、光あるところには影があります。 今回は国民年金基金のダークサイド(?)に迫ってみたいと思います。

国民年金基金のメリット

国民年金基金に加入できるのは国民年金の第1号被保険者のみです。 掛金の上限は1ヶ月68,000円です(個人型確定拠出年金と合算)。 この掛け金が全額所得控除となります。 課税所得金額が1000万円の人が年間816,000円掛けたとすると、 課税所得金額1000万円の所得税・住民税 約280万円           ↓ 所得控除後の所得税・住民税      約244万円                差額   約36万円 決して少なくない節税効果ですね。 確かにこの節税メリットは真実です。

国民年金基金のデメリット

実は国民年金基金のデメリットは細かいものはたくさんありまして、挙げればきりがありません。 最もよくないものが以下の項目です。 加入時の予定利率が一生涯継続される(現在1.5%)。 現状、定期預金などに比べれば高い利率ではあります。 けれども国債発行高の危機的な状況や消費税率引き上げ等を考慮すれば、今後金利が上昇することは避けられないと思います。 そのときに低金利時代に国民年金に加入した人はずっとその金利に縛られるのです。 国民年金基金は加入すると脱退できませんし、掛金ゼロにもできません。 契約した年齢になるまでお金は受け取れません。 年金は遠い将来の経済準備です。 ですからインフレヘッジができない国民年金基金には年金としての価値がありません。

追い打ちをかける継続性への不安

上記のようなデメリットのため、国民年金基金は加入時に将来の年金額が確定します。 これはよさそうに思える半面、現在のように低金利の状態が長期間続いていると、予定していた運用ができないことになります。 その結果、高い利率で約束した年金を支払う資金が不足する状態になっています。 国民年金基金が加入者に約束している予定利率を確認してみましょう。 1991年:予定利率 5.5% 1995年:予定利率 4.75% 2000年:予定利率 4% 2002年:予定利率 3% 2004年:予定利率 1.75% 2014年:予定利率 1.5% ご覧の通り、下がり続けています。 1991年のスタート時に予定利率5.5%で加入した人がすでに給付を受けているとしたら、給付のための資金は足りないはずです。 では、約束した年金はどうやって払っているのでしょうか? もうおわかりですね。 現在の加入者の掛金から払っているのです。 この積立不足からくる自転車操業のためにさかんに新規加入者を募っているわけです。 現に同じような制度である「厚生年金基金」が積立不足により制度廃止に向かっています。 国民年金基金は任意による解約ができないため、制度が危なくなっても解約してお金を引き出して逃げることができません。 仮に破たんしても国に救済する義務がないことも忘れてはならないポイントです。

既に加入していたらどうすればいいのか? 

ということで、もう結論はいうまでもありませんね。 国民年金基金はお勧めしません。 が、「もう加入しているよ」という場合はどうしたらいいのでしょうか? 個人事業主の方が法人成りして厚生年金に加入すると国民年金基金の資格は喪失します。 それでも、掛金を資格喪失時に受け取ることはできず、契約時の受取年齢まで待たなくてはなりません。 つまり続けるしかないのですが、2口目以降加入していた場合減口し、1口目だけの契約にすることですね。 そして、国民年金基金に加入していない個人事業主のあなたは、別の選択肢を検討しましょう。 私がお勧めするのは確定拠出年金です。 これについては、後日触れたいと思います。

ファイナンシャルプランナー 松田 聡子 
この記事を書いた人
松田聡子

【経歴】明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
【保有資格】日本FP協会認定CFP® DCアドバイザー 証券外務員二種


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