一人社長でも企業型確定拠出年金に加入するメリットはあるか?
選択制確定拠出年金の普及などで、中小企業にも企業型確定拠出年金が身近になってきました。 数百人単位の従業員規模でないと引き受けない従来の運営管理機関もある一方で、企業の規模を問わず引き受けてくれる運営管理機関もいくつか存在します。 気になる運営コストも、運営管理機関や窓口になる事業者によって異なりますが、以前より低く抑えられるようになりました。 けれども、代表者一人で従業員のいない法人の場合、やはり企業型より個人型に加入することを選ぶのが普通かと思います。 もちろん、一人法人でも厚生年金加入事業者であれば企業型確定拠出年金を導入することは可能です。 今回は、代表者一人の法人では企業型確定拠出年金を導入するのと代表者が個人型に加入するのとどちらがいいのか比較してみたいと思います。

企業型と個人型の違い

確定拠出年金には、企業型と個人型の2種類があります。 主な違いは「誰が掛金を拠出するのか」という点にあります。 企業型は基本的に掛金は事業主が拠出しますが、加入者本人が拠出できる場合もあります。 個人型は加入者本人が掛金を拠出します。

毎月の掛金の上限額

それぞれのケースに掛金の上限があり、以下の通りとなっています。

税制優遇

企業型

事業主負担の掛金は法人の課税所得の計算上損金算入。 加入者には給与課税されず。

個人型

掛金額全額が所得税・住民税の所得控除の対象。

一人で企業型確定拠出年金に加入するメリット

個人型より多くの老後資金を準備できる

厚生年金加入事業者である法人オーナーの場合、個人型で拠出できる限度額は毎月23,000円です。 これに対して、企業型であれば厚生年金基金など他の企業年金制度のない法人の場合、限度額は毎月55,000円です。 限度額いっぱいに掛金を拠出するなら、企業型のほうがより多く老後資金を準備することができます。

掛金が多ければ税制優遇の効果も大きい

法人は黒字であることが前提になりますが、加入者にとっては税引き後の手取りで積立をするより確実に有利です。 所得の多い、所得税の税率の高い加入者ほど有利になります。

一人で企業型確定拠出年金に加入するデメリット

個人型に比べ加入手続きが面倒

他の企業年金に比べるとはるかに導入手続きは簡単ですが、個人型に比べると手間も時間もかかります。

個人型に比べコストが高い

企業型も個人型も加入に当たってコストがかかります。 企業型は個人型に比べて、大きなコストを負担しなくてはなりません。 企業型のコストは事業主負担なので、従業員からすると企業型がありがたいといえます。 けれども、代表者一人で加入する場合、企業型のコストは大きなボトルネックになります。 コストは運営管理機関によってさまざまですが、初期費用、ランニングコストをよくシュミレーションしてみる必要があります。

企業型と個人型の分岐点

確定拠出年金本来の目的である老後資金を準備する点にフォーカスすれば、掛金を多く拠出できるほうがよりよいといえます。 また、黒字法人には節税メリットもあります。 コスト面で割安な運営管理機関を選べば、一人社長の企業型も十分加入するメリットがあるといえます。 企業型と個人型の分岐点は、ズバリ掛金です。 毎月限度額の55,000円を掛けられるなら、企業型がトータルでメリットが大きくなります。 それに対し、好調な業績が続く自信がない、掛けられるのは2~3万円くらいという場合はコスト倒れのおそれがあるので個人型にしたほうがいいでしょう。 企業型に一人でなく家族経営の法人で全員が加入する場合、一人当たりのコストが下がりますのでより有利になります。

ファイナンシャルプランナー 松田 聡子
この記事を書いた人
松田聡子

【経歴】明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
【保有資格】日本FP協会認定CFP® DCアドバイザー 証券外務員二種


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